東京二期会オペラ劇場

オペレッタ「こうもり」


2021.11.25~11.28 日生劇場

ファルケ役

指揮:川瀬健太郎

演出:アンドレアス・ホモキ

管弦楽:東京交響楽団



ウィーンに行ったときの楽しみは、古書店を巡ること、TafelspitzやApfelstrudelを食べること、ミュージカルを見ること…といろいろあるけれど(もちろんオペラも観る)、フォルクス・オーパーで「こうもり」を観ることは外せない。

 

あの劇場で観る「こうもり」には憧れを通り越して、ある種の恐怖すら感じるのだが、リラックスしてただ楽しむ自分もいて、何とも不思議な感覚になる。

 

オペラよりも軽く、気軽に楽しむことができると言われるオペレッタは、踊りアリ芝居アリと確かにワクワクする要素が満載であるが、それは単に娯楽を求めた結果ではない。そこにはオペラの発展から派生した存在感と、それ以上に民族文化の集大成のような部分があり、それこそが私に恐怖を与える要素なのだ。

 

かつてブダペスト歌劇場や、それこそウィーン・フォルクス・オーパーの引っ越し公演にゲストで出演させていただいたときも、やっぱり楽しいだけではなかった。いや、底抜けに楽しいし、彼らは楽しみまくっているのだけれど、まるで阿波踊りの波に放り込まれたシロートのような立ち位置の悪さ…でもよく分からんけど楽しい!そんな状態だった。

 

とは言え、幾度となく演じる機会に恵まれたファルケは、私のキャリアを作ってくれた大切な役。ましてや世界的演出家アンドレアス・ホモキさんの演出、しかも二度目の出演ということで、さらにいろいろと見える部分もあったが、やっぱり恐怖を拭い去ることはできなかった。

 

分かったことは、笑いが目的ではない…ということ(今までもそうはしてないけど、笑いが欲しい要素の一つであることは間違いない)。笑いのために創ろうとすると、肝心の音楽はいとも簡単に崩壊する。しかもその崩壊に気付きにくいのは、音楽に難解さがないように聴こえるから。しかし実はこれほどまでに音楽的な作品はなかなかなく、音楽家として正統に(いいコトバが見つからないのでこう言う)取り組んだときに、おのずと楽しさが湧いて出てくるのだ。同時に民族や文化の壁も出現するけれど。

 

前述のウィーン・フォルクス・オーパーの引っ越し公演の話、「互いをDU(親称)で呼び合って、キスし合って…」というシーン、ファルケの私が音頭を取るわけだが、天使のようなバレエダンサーが私に近づいて、当たり前のようにキスをした。なんという恐怖💛