東京二期会『イオランタ』出演を記念し、2008年「にっぽん丸」でのヨーロッパ周遊中、加藤昌則さんとサンプトペテルブルクを訪れた際に綴った日記の一部を公開いたします。
<前編>
5月27日(火) 37日目 晴れのち曇り、時々雨 サンクトペテルブルク
martedi 27 maggio bel tempo, in seguito nuvoloso e pioggiafine
昨日の疲れが、身体だけでなく心にまで蓄積されている…そんな朝を迎えた。しかし今日でサンクトペテルブルクともお別れだと思うと、決して軽くはない身体に鞭打つことは、五体満足に生んでくれた母上も許してくださるだろうと、朝10時に最初の目的地「エルミタージュ美術館」に向かったのである。
エルミタージュ美術館は、ご存じのとおり世界屈指の美術館の一つであり、サンクトペテルブルクの最大の観光名所ともいえよう。開館は10時半、350ルーブル(約1.700円)で全ての美術品を観ることができ、さらに100ルーブル払えば写真撮影が、そしてさらに350ルーブル払えばビデオ撮影まで可能という、なんとも不可思議な太っ腹ぶりである。しかしハッキリ言ってたとえ追加料金を払わずとも、撮影してバレることは決してないと思う。
エルミタージュ美術館は、約400程ある部屋に、古今東西の美術品がギュギュッと詰まっていて、のんびり見ていると私のような美術シロートだと何が何だか分からなくなり、そのうち美術品と人の波に酔ってしまう。しかも監視員らしきロシアのお婆さんたちは平気で居眠り。ケースに入っていない絵画との距離は限りなく近く、写真は撮り放題。そりゃあ「ゴッホの前でゴホッ」なんて撮りたくなるのも仕方がないことだ。そう、仕方がないのだ。
美術品もさることながら、美術館の装飾が素晴らしく、作品に全く負けていない(3Fは一部ショボイけど)ことにも驚いた。とにかく天井が高いので、つい見落としてしまいそうだが、各部屋の上下左右も実に見応えがあった。
気がつけば約3時間、疲れはピークに達し、とりあえず観たいものをおさえた私たちは、昼食をとるために街へでた。
昼食の前にエルミタージュ美術館そばにある「プーシキンの家博物館」に寄り道。残念ながら火曜日は休みだったのだが、プーシキンはここで亡くなるまでの4か月を過ごしたらしい。続いて「血の上の教会」なる、ロシアらしい不思議な美しさを放つ教会の横を通り、レストランに入った。加藤さんはお気に入りのロシアビールでエネルギーの回復を図った。次の偉大なる計画のために。