MOZART SINGERS JAPAN

I DUE MOZARTI「二人のモーツァルト」


2021.10.08 王子ホール

第一部

「バスティアンとバスティエンヌより」

・序曲
ムチ、水鳥:鵜木絵里 / カッコウ、太鼓:宮本益光 / トランペット:近藤 圭 / ガラガラ:石野真穂 / ピアノ:髙田恵子

「コジ・ファン・トゥッテ」より

・ああ、見てよ、妹

・私、あの黒髪の人を取るわ

・心をあなたにお贈りします

・ほんのすこしで、誠実な許嫁の胸に

フィオルディリージ:針生美智子 / ドラベッラ:小林由佳 / フェランド:金山京介 / グリエルモ:宮本益光 / ピアノ:石野真穂

「ドン・ジョヴァンニ」より

・恋をする娘さん

・あそこで二人は許し合おう

・ああ私のお父様が

ドン・ジョヴァンニ:宮本益光 / ヅェルリーナ:三井清夏 / マゼット:近藤 圭 / ドント・アンナ:針生美智子 / ドン・オッターヴィオ:金山京介 / ピアノ:石野真穂

第二部

「フィガロの結婚」より

・序曲

・五つ…十…二十…

・どうぞお先に

・むごい女だ!なぜこれまで

・微風に寄せるカンツォネッタ

スザンナ:鵜木絵里 / フィガロ:近藤 圭 / 伯爵夫人:文屋小百合 / 伯爵:宮本益光 / マルチェリーナ:小林由佳 / ピアノ:髙田恵子、山口佳代

「魔笛」より

・愛を感じる男の人たちには

・地獄の復讐がこの心に

・ああ、私は感じるの

・私のタミーノ!おお、なんという幸せ

・パパパ

パミーナ:文屋小百合 / タミーノ:金山京介 / 夜の女王:針生美智子 / パパゲーノ:近藤 圭 / パパゲーナ:鵜木絵里 / ピアノ:石野真穂

アンコール

「フィガロの結婚」より

・伯爵夫人よ、許しておくれ

・苦しみと気紛れと狂気のこの日を



2018年に MOZART SINGERS JAPAN を立ち上げ、モーツァルトのオペラ全22作品をピアノ伴奏で録音するという壮大な計画をスタートさせた。ピアノ伴奏で…と言うのは、決して予算の問題ではなく、私たち声楽家のパートナーである優秀なピアニストたちを広く紹介したいという思いと、ピアノと音楽することにより、より声楽藝術に特化した研究がなされると考えたからだ。

 

今回開催した「二人のモーツァルト」はダ・ポンテ三部作完成を記念し、それらの作品の中から二重唱ばかりを集めてお届けするという内容だ。二人で歌うから「二人のモーツァルト」。録音で鍛えた私たちのアンサンブルを楽しんでいただきたいという思いと、二重唱ならば出演者が多くなって華やかになる、そんな企みによるコンサートだ。

 

気心知れた仲間との稽古は、それだけで宝物のよう。この集いのために今までがあった…そんな思いすらよぎる。当然本番もそう。まるで一つの大きな交響曲を奏でるかのように確実に終わりに向かうのだが、終わりを拒みたいという思いと、しかしこの流れに乗っていることで永遠を得るのではとの錯覚が交錯する。仲間の奏でる深くあたたかな音の波に私は浮いていた。

 

嬉しかったことは、今回の会場が私のホーム(と言っていいのか)、王子ホールだったこと。安心して演奏できることはもちろんなのだが、仲間たちが口々に「本当に良いホールだね」「ここで演奏させてくれてありがとう」なんて私に言うものだから、つい得意気になってしまう。私のホールでも何でもないのにさ。でも、それは本当に幸せなこと。

 

自分も歌っといてこんなこと言うのもおかしな話だが、つくづく人間の声って素晴らしいと思う。デジタル化が急速に進む現代において、時空を超えて私たちが、モーツァルトが書いた楽譜を見て、ただ声だけでそれを再現するなんて、それを奇跡と言わずしてなんと言う?

 

二人で歌うから「二人のモーツァルト」とのタイトルとしたはずが、まるで隣にモーツァルトが立っているような気がして、そんな二人もあるな!と思ってしまった。君と僕!

 

たとえそれが己惚れた錯覚だったとしても、仲間と創った音楽がその思いへと至らせてくれたのだから、私はその思いを決して疑わない。