龍角散 presents
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 特別公演2025
【大阪公演】EXPO 2025 OSAKA KANSAI
7/2(水) 19:00開演 フェスティバルホール
【名古屋公演】
7/3(木) 18:45開演 愛知県芸術劇場 コンサートホール
出演
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
グスターボ・ドゥダメル(指揮)
演奏曲目
ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』
(ソプラノ:クリスティーナ・ランツハマー
/ 語り:宮本益光)
チャイコフスキー:交響曲第5番
<前編>
「皆さんお元気ですか?日本へようこそ。先月の公演はとても素晴らしかったね。皆さんに感謝しています」そう言って指揮台に立ったドゥダメルさん。簡単なインフォメーションの後、ゲネプロが始まった。
私はこれまで、幾度となくオーケストラとは共演しているし、指揮者の横、ソリスト位置でオケの音を浴びる贅沢を享受してきたけど、ベルリンフィルの音はいまだかつて聴いたことのない音質と音圧だった。
今回の演目は、来日前に同コンビでベルリンにて演奏されたものだった。ソプラノ・ソロのクリスティーナさんも同じ。ナレーションが主催者とマエストロのご意向で日本語に代わるとのことで、私に白羽の矢が立ったわけだ。
現地ではドイツ語によるナレーションが俳優さんにて語られたが、その原稿や資料を手に入れるのに手間取り、日本語によるナレーション原稿を準備するのもギリギリになってしまった。
ドイツ語のナレーションはすべて曲間ではなく(曲間なら問題はなかったのだが)、全て曲中にあてがわれており、音楽的なタイミングがマエストロの考察の元、完全に決められていた(説明されたわけではないが現地の音源を聴いて確信した)。つまり極めて音楽的な語りが要求されていたのだ。神奈川「金閣寺」で出会ったドイツ語のスペシャリスト、庭山由佳さんにすがり、彼女の完璧かつ繊細なお仕事によって今回の版が完成した。
ゲネプロに先立って、ドゥダメルさんが私の楽屋で打ち合わせをしたいとの連絡を受けた。とにかく私は公演が上手くいくよう、リハーサルが円滑に進むよう、最大限の準備をして臨んだ。
午前10:45、世界のドゥダメルさんが陽気に私の楽屋に入ってきた。楽屋には指揮者・ピアニストの原田太郎さんと私、ドゥダメルさんの三人だけ。私はベルリンの音源を聴いたこと、タイミングはすべて理解していることを説明した。マエストロはそれを聞くと「ワオ、完璧じゃん」と陽気にウインクした。
そして一つ一つ確認すると、全て一発オッケー。amazing! を連発するドゥダメルさんに準備が報われた思いがした。
さて、ゲネプロも本番も、タイミングで言えば全て上手くいったと思う。ドゥダメルさんもそれにはご機嫌だったが、なぜ日本語を理解しない彼が、私の長台詞(二か所あった)の終わりのタイミングを完璧に把握し、次のナンバーへとアタックをかけられたのか謎でしかない。
それは楽団員も同じ思いだったらしく、公演終了後、打楽器奏者の一人が私と抱擁するマエストロを捕まえて「なぜ台詞の終わりが分かるの?完璧なタイミングだったよね!」と興奮気味に質問した。私が「マエストロは日本語もわかるんだよ!」と言うと、ドゥダメルさんも「そう!そして益光の発音も完璧だった!」と言い、皆で大笑いした。